薬研藤四郎の場合
薬研藤四郎の場合
鶴丸国永、燭台切光忠と聞いてきた。そして、いずれもかなり物騒な答えが返ってきた。
その答えから、彼らが私のことを大切に思ってくれているのはよく分かる。こんなダメな私を守ろうとしてくれるのはとてもありがたいのだが、いかんせん物騒だ。
もっと、こう、「守ってやる!」といった少女漫画的な展開がほしいだけなのだ。
きっと相手が悪かった。鶴丸国永は少女漫画というよりかは少年漫画に出てくるタイプだし、燭台切光忠はママさんではあるがあれはレディースコミック系だ。
もっと、まっすぐで、王道な答えが返ってきそうな相手に聞いてみるべきだ。
という考えから、
「薬研さん。もしも私が傷つけられたら、どうしますか?」
「大将、燭台切の旦那や鶴丸の旦那に脅されたんじゃねえのか?」
初鍛刀であり、心強い仲間である薬研藤四郎に聞いてみた。
「随分と彼らには脅されたけど、私はどうしても薬研さんはどう考えるのか知りたいんです。古い付き合いですし」
だったら初期刀の加州に聞いたらどうだ?と聞いてきたが、加州清光がどう答えるのかは容易に想像ができるため、今回は却下した。きっと真顔で、
「ふーん。で、誰?ちょっと殺しに行ってくる」
とか言うに違いない。他の本丸の加州清光とは違って、私の本丸の加州清光は血の赤が好きな男だ。
薬研藤四郎は、そもそも大将は傷つけられるようなタマじゃねえよなぁ、などとブツブツ言っているが、突然ニヤリと笑ったかと思うと、
「その場で返り討ちできるくらいに、今から俺っちが鍛えてやる」
と、道場に連れて行こうと引っ張った。
冗談じゃない。薬研こそは「大将のことくらい守ってやるよ」と言って柄まで通してくれると思っていたのに、なぜ私が強くなるのだ。
「薬研さん、これはもしもの話だから、鍛えなくていいから」
と必死に訴えたのだが、その日以降、粟田口の短刀達に混ざって鍛えられたのは言うまでもない。もちろん、師匠は薬研藤四郎だ。
私は、今後暇だから、と不要なことに絶対に首を突っ込まないことを固く心に誓った。